6、熱き夏予選



作・S





待ちに待った予選大会が始まった。

北海道は北と南に分かれており、SA学園は北にはいっていた。

聖クラリスは南にはいる。

俺たちは予選大会を1年生のスタメンで突破することになった。

・・・いや、根本先輩がそのようにしたのである。

松尾先輩が出て行ったあと、監督を根本先輩がやっているのである。

というわけで、聖クラリスと戦ったメンバーから変更なしで一回戦が始まったのだ。

一回戦は熊谷商業高校

先攻・熊谷、後攻・SAで試合が開始した。

一回表

緊張したのか神岡がフォアボールを連続で出してしまい、無死一・二塁。

バッターは3番の興田

冷静になった神岡に内角と外角の際どいところへ投げさせる。

選球眼のチェックだ。

2球とも見逃されツーボール

内角低めへと落ちるフォークを投げさせる。

案の定引っ掛けてくれて、ピッチャーゴロ

三塁・二塁をアウトにして二死一塁

4番の柿本だ。

打席に入ると威圧感のようなものがある。

ここは、変化球のみで攻めるべきだろう。

外郭低めへのカーブとスライダーでツーストライク

止めは内角へのスライダーで・・・

キィィン・・・

打球はフェンス直撃の二塁打

これで、二死二・三塁となってしまった。

5番は茂木

肥満体系だがパワーはありそうだ。

ここは、肥満の弱点・内角を攻めよう。

案の定内角への攻めで三振にできた。

次はSMの攻撃だ。

1番の新条が3球目をセンター前に、2番の神楽師が2球目を三塁に転がして一死二塁

そして、俺に打席が回ってくる。

「得点チャンスに俺か…まあ、頑張るかな?」

1球・2球ともに外角へのボールでツーボール

(流石に次はいれてくるはず…それを叩く!)

3球目は内角へのストレート

俺は力いっぱい振りぬいた!

バットから離れたボールは…

右翼席へと飛んでいく

俺が一塁を回ったところで、右翼席へ吸い込まれた。

俺は気持ち良くダイアモンドを一周して、ベンチへと帰った。

「さ〜て、三番・四番のアベックホームランといくか?」

中嶋が軽口をたたく。

「ナイス、神藤!流石は女房役だぜ!」

「コノヤロー!派手な一打席目にしやがって!俺も打ってやるからな!」

「ナイスバッティングだ、神藤。ただ、もう少しひきつけて打ったほうが良かったな。」

神岡、山崎、根本先輩がそれぞれに評価してくれた。

この後、最終回まで神岡が力投し、無失点で抑えた。得点も、三回・四回に2点ずつ、七回・八回に1点ずつ入れて、結局9−0だった。

この調子で勝ち進み、準々決勝まできた。

相手は昨年の地方大会準優勝校・北北海道高校だ。

試合は北北海道の先攻ではじまった。

一回はお互いに三者凡退に終わった。

二回は4番の生来歳貞からはじまる。

「お手柔らかに頼むよ。」

そういって、打席にはいってきた。

外角低目のストレートで様子をみる。

カキィィン

見事に拾われる。

「研究が足りないね。松尾ならこんなリードしないよ。」

生来さんは、ボールを打った後、俺にだけ聞こえるような小さな声でつぶやいた。

俺はマウンドへと行く。

「すまん神岡。見事に拾われた。」

「いや、ちょっと腕が振れてなかった俺が悪かった。」

俺達は反省しあった。

「しかし、あんな凄い人は先輩達だけかと思ってたぜ。」

「ああ、俺もだ。」

「戻れよ、神藤。もうホームランなんか打たせねえ。」

そのあとの神岡は凄まじく、バットに当てることすら困難におもえた。

二回に中嶋・神岡が出塁するも得点はできずに、四回を迎えた。

2番・3番を三振にとり、二度目の生来さんとの勝負を迎える。

一球目は内角低目へのスライダー

「内角低目スライダー」

?!わかってるのか?

二球目は外角低目へのフォーク

「外角低目フォーク」

やはりわかってるのか?なら、何故ふってこないんだ?

二球でツーストライクまで追い込んだ。

三球目は内角低目ストレート

もちろん、ボール球だ。

だが…

カキィィン

二打席連続ホームラン

どうやっても打ち取れないのか?!

五番を三振にとり、攻撃を終わらせる。

「よく頑張ったな。お前ら。」

突然の言葉にびっくりした。

「次の打者から3年を出す。だが、神藤・神岡はそのままだ。」

替わった入江先輩がバントヒット

根本先輩が右前ヒット

俺は打ち取られたが、西田先輩がセンターに三塁打を打ち、同点

神岡は三振にとられるも、大平先輩のセンター二塁打で逆転

本村先輩が上手いバントでフィルダースチョイスにして一・三塁

狩野先輩が右前ヒットで満塁にするも、編田先輩が三塁へのライナーで攻撃終了

七回に三度目の生来さんとの対決

投手が神岡から西田先輩へと替わる。

「神藤、俺は全部ストレートを投げるからしっかり捕れよ。」

一球目内角低目へのストレート

グバァ

体が浮かされる。

凄まじい球威だ。

二球目は内角高目、三球目は外角高目

生来さんは2球とも振るがまったく当たらない。

強すぎる

生来さんを三振にとると、再び神岡と替わった。

神岡は生来さんには完敗したものの、それ以外はパーフェクトだった。

攻撃面は幾度となくチャンスを作るも後続が上手く打ち取られ、二点を追加するにとどまった。

結局は5−2でSAの勝ちだった。

最大の壁である北北海道を倒したSA学園は優勝した。

俺は地方大会を3本塁打、6打点と十分な内容で終わった。






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