5、夏への序章



作・S&M





そしてあっという間に金曜日になった。

もちろん一学期最後の授業…と言っても今日は毎回学期末にある球技大会なのだ 自分の好きな競技にでれるらしい…ただ自分の入っている部活のは駄目らしいが

俺と山崎はサッカーに出ることにした。

「山崎、お前どこになった?」

「俺か?キーパーだ。お前は?」

山崎がボールを捕る真似をしながら聞く

「もちろんフォワードだ。俺のボールがお前に捕れるかな?」

「ふん。お前のへなちょこシュートなんか片手で十分よ。」

「片手で足りるかは体に教えてやるぜ。怪我してもしらねえぞ?」

笑いながら言いあう。

なんつ〜か…やっぱり気心の知れてる奴って良いな。

「あ、神藤君たち早く来て!開会式が始まってるよ!」

「マジで〜!?山崎、早く行くぞ!」

「おう!」

開会式…校長の20分にわたる長い話…みんなのテンションは下がった。

そして、男子の球技の試合はサッカー、バスケ、テニスの3つで、女子はバドミントン、バレーの2つ …

先輩達は狩野先輩、竜一先輩と総将先輩の三人がバスケで、聰先輩がテニス、残りの先輩達はサッカーをすることになっている。

学年とは関係なくクラス別でA.B.C.Dの四つのブロックに分けられ多く勝ったクラスがトーナメントに出れるという。

俺たちが入学する前にあった三学期の試合は最後の方だからクラスのみんながまとまってかなり白熱したらしい。

「さ〜て、みんな頑張るぞ〜!」

クラスのムードメーカー的存在の山岸がみんなに言う。

「おう!」

みんながそろって応える。

なんというか…山岸がいうと上手く乗せられてしまうんだよな。

大会が始まった。

神岡のクラスは2ー4で負けていた。

一回戦は3ー0で勝った。俺は2点決めた。

「しかし、次が山崎のクラスか。もう少しあとでしたかったなあ〜」

俺は溜め息をつく。

と、そこへ千里がやってきた。

「早く早く、神藤君。もう始まっちゃうよ!」

「え?もう試合だっけ?」

「違うよ!西田先輩の試合見に行くんでしょ?!」



竜一先輩のクラスはチームワークが凄かった。

ディフェンスにパス能力…しかしゴールの決め手がいまいちだった。

そして目がハートになって竜一先輩を応援する女子の観戦者。

「うらやましいなぁ…。」

と、俺の隣で呟く山崎…

21対2で竜一先輩のクラスが勝った。

続いて、総将先輩と狩野先輩の二人だ。

総将先輩が言っていた…

「俺にはスキルとかないから、バスケといえばダンクしか出来ないのよ…」

…それでも十分凄すぎる!

でも…人気はレイアップシュートが得意な狩野先輩だった。

総将先輩は天然ボケで皆に笑われた。

総将先輩のチームが42―10で勝利した。

「総将先輩〜、最高〜!」

方尾が総将先輩に手を振っている。

総将先輩も気付いたらしく笑顔で手を振り返している。ちょっと顔が赤いように見えるな。

「こりゃ〜付き合い始めるのも時間の問題だな。」

俺はグラウンドに戻ることにした。

グラウンドに戻ると山崎が近付いて来た。

「おい、神藤!お前どこにいたんだ?」

「どこにって…体育館だよ?どうしたんだ?慌てて。」

俺はそういうとユニフォームを着始めた。

「いや、それがよ、松尾先輩の娘って名乗る奴が根本先輩のところに来てるんだって。それも三人 も。」

何いってるんだこいつは?

「はぁ?だって、先輩はまだ17だろ?結婚すらできねえじゃねえか。」

「だから不思議なんだろ!とりあえず、根本先輩のとこに行ってみようぜ。」

まあ、別に見に行くことに依存はない。でも…

「お前、先輩どこにいるかしってんの?」

これを知ってなきゃ、試合の時間がきてしまう。

「もちろん。部室にいるらしいぜ。」

「わかった。んじゃ、行こう。」

「おう。」

俺と山崎は部室へと急いだ。



「根本さん…父上はどこです?」

黒でセミロングの髪をした少女が震えた声で問う。

「洋邦はアメリカに行ったぜ。来年の春には帰ってくるらしい。」

根本は目の前にいる少女たちに言った。歳は13〜15位であろう。まだ、幼さが残っている。

「よかった〜お父さんに捨てられたんじゃなかったんだね。」

金髪でロングヘアーの髪をした少女が安堵の溜息を吐く。

「私はパパを信じていたよ!」

胸を張って、黒い肌をした少女が言った。

「なんですって?一番最初に泣き始めたくせに」

「そういうお姉ちゃんこそ!」

三人の少女が言い合いを始める。

「根本さん。それで私たちはどうすればいいんでしょう?」

少女たちを尻目に男が話しかける。

「そうだな…今日アメリカに行ってくれてもいい。洋邦には連絡しとこう。あいつは親馬鹿だから大丈夫だろ。」

「かしこまりました。」

「姫様たちを頼んだぜ。梅斗。」

梅斗は頭を下げる。

「わかっております。必ずや、守り通します。それが、使命ですから。」

梅斗は根本に答えた。

「お兄ちゃん、まだ〜?私、早く遊びに行きたい〜。」

梅斗は微笑みながら立ち上がり、

「ええ、今行きますよ。それより、家に帰って身支度を済ませましょう。」

「なんで?」

「父さんの所に行きますよ。」

「本当に?やった〜!」

三人は大喜びして部屋から出て行った。

そのあとに続いて梅斗がでていく。

「すまん…苦労を掛けるな。梅斗…」

根本は誰もいなくなった部室で一人ごちていた。



俺たちが部室の近くまで来ると四人の人が外へと出ていた。

「あれが?」

「そうみたいだな…」

四人はそのまま外へと行ってしまった。

「どうする?」

山崎が俺に聞く。

「どうしようか?…もう、試合の時間じゃないのか?」

山崎は腕時計を見て

「あ〜!!15分も過ぎてるぞ!!」

「なに〜?!あと残り、10分じゃねえか!」

俺たちは駆け戻っていった



結局、戻ることができず、試合は0−1で負けていた。

「くそ!まけっちまってる」

「よし!勝ってる」

俺たちは思い思いの言葉を口に出した。



長かった球技大会が終わった。閉会式が終わると、俺と山崎、千里は一緒に帰路に着いた。

しばらくとりとめのない会話をして、俺は2人と別れた。



「結局、あの女の子達は本当に松尾先輩の娘だったのか?」

俺は、日記をつける頃になるとそのことを考えていた。

本当に娘だとすれば、先輩は養子をあの年で持っていることになる。

そんなことが可能なのだろうか?

ただ、そう呼ばれてるだけなのだろうか?

大体、娘ならば何故学校にくるんだ?

アメリカに行ったことを知っているだろうに。

考えれば考えるほど、堂々巡りになっていく。

俺は、考えるのをやめて日記を書き上げることにした。

DJ.MASATOのラジオが聞こえてくる。

俺は早めにベッドに潜り込んだ。






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