2、飛翔
作・igniter
光。ペニーの網膜には黄ばんだ病室の天井が映った。
ペニーは昨晩の戦いが夢のようであった。
できれば夢であってほしかった。
そうはいかないと悟るときに人がきた。
彼女の名はルーテ・エウ゛ォル。
スマバラの郊外にすむ心優しく頼もしい女性だ。
二年の付き合いだ。ペニーは何故だか彼女が気になるようだ。
「やぁ、ルーテ。無事で…」
ペニーはルーテが生きているのを素直に喜んだ。
が彼女は悲愴な顔で
「パパが…」
とただそれだけ。
彼女はペニーに泣き崩れる。二人は肩を寄せる。
そのままペニーは再び眠りについた。己の内なるものをより一層深く強められて…。
[スマバラ襲撃]翌日の昼、スマバラに救援部隊が到着した。
それは連合で最大製造数を誇る準大型飛行輸送機4機からなっていた。
大きなコンテナから羽がはえたような外観から[ファット・バード]と呼ばれる。
しかしその四羽の背後に見慣れない、巨大なものがあった。
地球連合軍汎用多目的試作型モビルスーツ専用運用航空航宙機動戦艦[モリヤマ]。「B」の母艦である。
基地の敷地に巨大な影を落しながら東から侵入する。
午後の陽の光を純白の船体にたたえ、低い唸りをあげる。
そんな艦隊を期待と喜びの目で見る人々の中にペニーはいた。
モリヤマの巨体が地に休む瞬間ペニーは風を肌で感じた暫くしてペニーはそのの近くに自然と立っていた。
左舷ハッチが開き数歩下がる。新造艦である雰囲気を思わせるモリヤマの内部。
そこから一台のジープがペニーのすぐ前を走り去った。
若い士官が運転し、中老の士官が構えているのが目に入った。
「おそらく艦長だな」
そう予測するペニー。
すると何を思い立ったのか救援物資の搬出で混雑する間をペニーは走りだした。
その人の後を追って。この後ペニーが何をするかは明白だろう。
それよりもペニーは大胆かつ前向きである。
コスモ軍への復讐を果たすためその老人に自分を「B」のパイロットとしてモリヤマに乗艦させてくれと主張するのだ。
そのジープは仮司令所の前にあった。ペニーは直ぐ様入った。
あの士官は凜とした態度で座っていた。いかにも漢らしい武人だ。
「イムラ・トシヒサ少佐、モリヤマは早急に「B」を受け取り、出航してくれたまえ」
臨時司令(大佐)はモリヤマは必要ないというのだ。
「しかし昨晩の一件で正規パイロットは…」
バターン
ドアが勢いよく開く。
「ボクを、パイロットに。あの艦に…」
「オイッ!貴様何を言うんだ!!」
護衛の士官が胸ぐらを掴む。
「ボクをパイロットに!!」
ペニーに迷いはなかった。イムラはそんなペニーの眼差しを感じ、
「誰だね、君は」
と一言。
「この子は昨晩「B」でタサップを撃退しました」
そうドアの後から女性の声がした
声の主はモリヤマの通信士サノ・サンであった。
20歳ぐらいでなかなかのスタイルである。
「彼、ペニー君ならやってくれます」
「ボクがやらなくちゃいけないんだ」
ペニー自分の思いを伝えた。
「ウーム…。よし乗艦を許可する、出航は3時間後だ」
イムラは現時点で最も有効的な判断をくだした。
「ありがとうございます!!」
ペニーは若士官をふりはらいイムラに強く敬礼した。
出航数分前
ペニーはモリヤマのブリッジへ。そこにサンとイムラ、他3人の女性がいた。
「機関出力60%出航可能稼動率突破」
「出航10秒前、8、7、5秒前、3、2…」
ペニーは息を呑んだ。
「モリヤマ発進せよ!」
ゴゴゴ…
モリヤマは赤くなりゆく大空へ飛び立った。
まだ癒えぬスマバラを後にするモリヤマ。それを追う大きな影。
離郷する少年は新しい世界で何を見るのか。
次回「機動戦士Bバンバム」
第三話「宿敵」
その瞬間、恐れるなバンバム!!
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